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2014年12月11日木曜日

ドイツ語と私             遠藤昌一


 我々“Voice”に参加なさっておられる方は男女あり、年齢も多岐にわたっており、そのため過去現在色々多くのご経験をなさっておられる事と存じます。私たちは音楽を通じて集まっているわけですが、それ以外の経験を分かち合うのも楽しみの一つであり、また我々の音楽の質を高めるのに大いに役に立つと思います。幸い毎月月報が出ております。これを通して何か簡単な事でもご自分の経験で興味のある事を載せたらお互いをさらに良く知りあい、連携が強まるのではないでしょうか。皮きりに“Voice”5月号で呼吸に関する解剖とその機能について書きましたが、差し出がましくまた一つ書いてみます。

 私たちは年毎年末にベート-ベンの第9を歌います。その練習で ä、ö、ü と子音で終わる単語の発音で苦労します。私は旧制高校でドイツ語を第2外国語として3年間週4時間も習いました。先生はリルケの研究で日本での第1人者であったのですが、彼がドイツに留学したかは知りません。それに授業は会話は全然なく、「エッケルマンのゲーテェとの対話」だとか「プラーグへの旅路のモーツアルト」等と言う本を読まされただけです。それで私はドイツ語の発音はあまり自信がありませんでした。でも彼が教えてくれた発音は私たちがVoiceの第9の練習で教わっているのと全く同じなので安心しました。医学部では当時はすでに日本人の教授が日本語で教えてくれていたので問題はなかったのです。卒業後結核予防会に入りましたらドイツ語の文献を多く読まされ抄録させられたので閉口しました。ドイツ語の名詞には男性・女性・中性・複数があり、それぞれに格があり、それぞれに違った冠詞が付くのです。その後1972年にホプキンスに留学、そしてWHOに就職し、ドイツ語とオサラバができ、万歳でした。ちなみにドイツ語は国連の公用語ではありません。

 私はクアラルンプールに4年間滞在した事があります。その時Mind your languageという 週1のTV番組があったのです。それは英国への外国からの留学生が日常の会話をするものでした。ですから全く違った方言や発音なのです。興味があり、毎週見ていたのですが、或る日の番組に英国に住む中年の英国人が出演しました。その人のしゃべる英語は方言と訛が強くて、全く分かりませんでした。英語を母国語とする人でも分からない英語を話すのにはとても驚かされました。英語は全世界中広く話されています。シンガポールではシングリッシュと言って機関銃のように早く鋭くしゃべります。フィリピンではタグリッシュと言って英語とタガログを混ぜたような英語です。私は14年間フィリピンに住みましたので私の英語はフィリピン訛と言われます。
と言う事で“Voice”に参加した時に歌詞のドイツ語はどうなのかと考え、ネットで調べてみました。ドイツは地方分権進んでいるので、やはり北部方言と東中部方言とはっきり分かれているそうで、現在の標準ドイツ語は東中部方言を基礎にしているそうです。でも完璧な標準ドイツ語を話す人はドイツ人の3%しかいないそうです。

 私は3カ月WHOの研修を受けるためプラーグに滞在しました。丁度5月で春の音楽祭の時だったのですが、4月27日にプラーグの到着した時には、演奏会の切符は全部売れ切れでした。チェコの人は音楽が飯より好きなのでしょうか。因みに食事は旨くなかったです。しかし最後の第9を聞く事が出来ました。ところが歌詞がチェコ語なのです。チェコスロバキヤは第二次大戦でドイツから酷い目に合ったからなのだそうです。下宿のおばさんはそのためドイツが嫌いで「私はドイツ語は流暢に話せるのだが、もう絶対に話さない」と言っていました。でも第9を楽しむにはや歌詞ははり第9はドイツ語でなくては良い感動は受けません。その後1994年に再度プラーグを訪れた時にはドイツ人の観光客が多く、ドイツ語を話さざるを得なかったようです。

 此処で私の意見を述べさせてもらうと。コーラスの歌詞は曲に合ったものでなくてはならない。逆に曲は歌詞に合ったものでなくてはならないと思います。それから発音ですがコーラスの全員が同じ発音をしなければならないと思います。

これから落語です。歌詞の冊子の33頁にÜber‘m Sternenzelt!  Über Sternenとあります。Über‘mはÜber demを一緒に続けてしまったもので、demは英語のthe、 英語でいえばOver theとなるわけです。Sternenzeltはひとつの単語で私の辞書には星空と書いてありました。星空はひとつなので定冠詞をつけたのでしょう。次のSternenはSternの複数です。昔殿様がお空を見上げてお星さまと言ったら。家来が「殿は偉いのですから星に様をつけてはいけません」と言ったのです。それで星が沢山あるので星メラと言ったとか。

 






2014年6月7日土曜日

歌唱力強化訓練のための解剖学     遠藤昌一



我々“Voice”では今年に入り歌唱力向上のための基礎能力を高める訓練を始めました。そのために役立つ体の解剖やその機能について述べてみます。

歌を歌うには胸部と腹部それに頭の一部を使います。

ヒトが起立するのに脊柱がありますが、これは24個(頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個)の椎骨からなり、椎骨の間に柔らかい組織からなる椎間板があります。この柔らかい椎間板のために我々は背柱を前に曲げたり、後に反ったりできるのです。

その椎骨から関節により左右に一本ずつ肋骨が前、下に伸びており、先は神主さんが持つ(「笏」(しゃく)の様な形をした胸骨に繋がります。繋がるのは骨直接ではなく、その間にある軟骨によります。肋骨の間には肋間筋があり、この収縮により、また他の骨との柔らかい組織(関節や軟骨)により肋骨を上下に動かす事が出来、そして胸を大きく広げ、空気を肺に取り込む事が出来るのです。

一番下の肋骨について横隔膜があり、これが胸腔と腹腔を区切っています。横隔膜は筋肉で出来ており、普段は上向きにゆるく円を書いたような形をしていますが、空気を多く吸うときには収縮し平たくなります。

また、腹部前部を一番下の肋骨から出て坐骨と恥骨に繋がる斜腹筋が覆っています。これを収縮するのが腹式呼吸です。

我々の訓練では胸郭を広げ、斜腹筋を収縮させ声を出す訓練をしています。TVでの中丸三千絵さんのお話によると、演奏後数日は胸郭が数糎広がったままだそうです。この事は胸郭を広げ、腹式呼吸で歌うことにより良い声が出ることを示しています。

声は声帯を振動させて出します。その音は口腔、鼻腔および副鼻腔の共鳴によって美しい声や、聞きにくい声に変わると言われています。これらの器官を上手に使う事が大切です。ある聞いた話によりますとネアンデルタール人はこれらの器官の発達が不十分であったので、音声の種類に乏しく仲間とのコミュニケーションが旨く取れず、その結果社会生活が旨く行かず、絶滅したと聞きます。ヒトは様々な声を出す事が出来る事により複雑なコミュニケーションを取れるようになり高度の文明を発達させたのでしょうか。

前期の器官・組織を使って最大限に吸う呼吸の量を肺活量と言います。その内1秒間に吐き出す空気の量を肺活量で割ったものを1秒率と言います。この率が大きいほど良い声が出るのでしょう。健康な人は80%以上です。これを試験器具を使わずに試すには蠟燭に火をつけてその前に口を大きく開け多く吸った息を一気に吐き出し火が消えれば、健康な肺機能と言えるでしょう。

息を早く出せない人がいます。1秒率が低い人です。このような人の多くは肺気腫です。末端の肺胞が壊れて弾力を失っています。歌を歌う人にはこの様な人はいないと思いますが、体質にもよりますが、喫煙が肺胞を壊します。

呼吸して息を吐き出すとその後自然に意識せずに空気が肺に入り込みます。歌ったり、発声練習をした場合、自然に息が入りますので、口に異物が入っているとそれが無意識に器官に入ろうとします。ですから発声練習や歌唱練習などの時に飴を口に入れておくと、気管に入り込む危険があります。


筆者プロフィール
 東京大学医学部卒 医学博士 元WHO職員
 “Voice”団員(テナー)



※“Voice”5月号より転載させていただきました。