2009年6月1日月曜日

♪ 『戴冠ミサ』の部屋 ♪ その⑨


~『”戴冠”の由来』~

この『戴冠ミサ』は1779年3月、モーツァルト23歳、ザルツブルク時代に作曲されました。
その後まもなく、そのザルツブルクで初演されたようですが、 曲名にある『戴冠(式)』という呼び名は作曲者がつけたものではありません。
後にいつの頃からかそう呼ばれるようになったようです。 (いわば『あだ名』です) その由来となっている2説を紹介いたしましょう。

【説:1】
ザルクブルク郊外にあるマリア・プライン教会の『奇跡の聖母子像』のために毎年行われる、『聖母子像戴冠記念式』のために作曲されたことに由来しています。
この母子像は、色々な奇跡の出来事を起こしたとして過去に戴冠(即位)しています。
以後、毎年その『戴冠(即位)』を祝う式典が行われていました。
このようないきさつから『戴冠ミサ』となった、という説です。
【説:2】
作曲の約10年後の1790年(モーツァルトの死の前年)、オーストリア皇帝レオポルト2世の戴冠式が盛大に行われました。
その一環としてこのミサ曲がウィーンで演奏されたので、それ以来『戴冠式ミサ』と呼ばれるようになった、という説です。

【1】は昔からの定説、【2】は近年言われるようになった説のようです。
なお、余談ですがモーツァルトの作品で『戴冠式』と呼ばれている曲がもう1つあります。
『ピアノ協奏曲第26番ニ長調』です。
この曲は上記【2】のレオポルト2世の戴冠式が行われていた時期に作曲され、 自身の企画演奏会で初演されたため、そう呼ばれるようになりました。
(戴冠式の席上に演奏されたものではないようです)

その時、世の中はどんな状況だったのでしょう?
その時、作曲家は何を思い、何をしていたのでしょう?
音楽の『その時』を知ると、聴くことも表現することも楽しく豊かになりますね。